「報われない者たち」の物語、"響け! ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~"
この記事には映画「響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~」の
結末に関わる重大なネタバレがあるので気を付けて下さい。
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■報われない物語
「誓いのフィナーレ」は、「報われない者たち」の物語といっていいでしょう。
塚本秀一は想い続けた黄前久美子への気持ちが通じたと思った矢先、
改めて面と向かって別離を告げられてしまいます。
加部友恵は持病の悪化により、コンクールの奏者として
参加する道を閉ざされてしまいます。
鈴木美鈴は結局周囲に迎合し、呼ばれたくないと思っていた呼び名で
周りに馴染んでいく道を選ばざるを得なくなります。
久石奏は先輩に指示されて交流を深めていた美鈴が、最終的に自分ではなく
久美子と周りの先輩に寄って行く姿を見届けることになります。
月永求は、親類と関わらない道を自らの意思で選んだ結果、
親類の率いる高校に全国代表を奪われます。
黄前久美子は恋愛、将来、そして部活、どの分野においても
ハッキリした結果や目標を定められないまま終わってしまいます。
久石奏は、劇中でこう言います。
「頑張るって、何ですか?」
黄前久美子もまた、こう言っています。
「頑張っても、上手くいかないことだって、あるよ」
北宇治高校吹奏楽部は、結果だけ見れば
関西大会でのいわゆる「ダメ金」止まりで、
全国大会への出場は叶わず終わってしまいます。*1
しかし、その物語は「不幸な物語」だったと言えるでしょうか。
少なくとも、鑑賞した僕は「不幸」だった・「バッドエンド」だったとは
思っていません。
久美子が言っていたように、「頑張っても結果に繋がらないことだってある」
けれど「頑張ることが無駄だ」ということでは決してない。
その過程で得られた経験、人脈は無駄になることはない。
少々Japanese思考が過ぎる考えとも言えますが、
そういう事を伝えたい作品なんだな、ということは伝わってきました。
■気になったところ
僕は原作既読組なので、やはり原作であった描写でなくなっていた所が
いくつか気になったりはしました。
上映尺が100分だったので、やむなく削った所もあったんでしょうが…
やはり削って欲しくなかった所もあったなぁと。
久石くんと美鈴が急接近して、美鈴が明確に久石くんに依存し始める所が
原作ではいかにも「武田綾乃~~~!!!」っていう感じで最の高だったので
是非ともネットリ描写して欲しかったのですが、映画ではかなりあっさり目に。
サンフェスで美鈴と久美子が絡むところでちょっとだけ
久石くんが悪女感を出してくれていましたが、
もっとやってくれてもいいのにな~~~!!! という気持ちで一杯でした。
あと梨々花ちゃんが久石くんと仲良しだよ~って描写が全然なくって哀しい。
というか梨々花ちゃん部員紹介以外ほとんど喋ってないよね…
加部ちゃん先輩とのエピソードを
ちゃんとやってくれていたのは嬉しかったですが、
そうなると加部ちゃんと1年の小日向夢との絡みをもっと
やってくれたらいいのにな~って思いました。
序盤に先に一人見学に来るのも小日向から久石くんに変えられちゃってましたね。
多分ですけど、これは上記の「何かを諦める人」を描きたいというテーマが
あったために、加部ちゃんのエピソードは削らないことにしたんだけども、
尺の都合で小日向との絡みは切らざるを得なくなったために
色々構成しなおしたということなんですかね。
あと麗奈が「高校出たら海外に行く」っていう話って
お祭りの時にしてませんでしたっけ。僕の記憶違いかな。
小説の短編で出てくるエピソードも沢山あるので
覚えておくのが大変ですね。
「麗奈はもう自分の道をハッキリ決めているんだ」っていう
情報があった方が、久美子にとっても「焦り」が出て
合宿で一つの決断をする説得力が出た気がするんですけどね。
久石くんのオーディションですったもんだする所も、
まさかの夏紀センパイの壁ドンが全カット!!
これは哀しい! 哀しいですよ!!
久美子の「奏ちゃんは、夏紀先輩が嫌いになれなくてつらいんじゃない?」(意訳)
というくだりも無くなってしまいました…
久石くんと夏紀先輩の絡みがほとんど無くなってしまったのも
もったいないなぁ~と思ってしまいました。
原作となる第二楽章上巻・下巻では、いわゆる「リズ」で出てくるエピソードと
今作での久美子の物語を並行して描いているので、
どこを今作で描写に加えるか非常に難しかったのが感じられました。
パンフレットによると「誓い」は「リズ」と表裏一体の作品として
制作することは決まっていたそうなので、
「リズ」で描写する部分は「誓い」では入れない、と決められて
殆どが削るというか再構成されることになった、のが
難しいポイントだったと思われます。
まぁ一番難しかったのは、
「黄前久美子の物語はもう既に完結してしまっている」
ということだったんだと思います。
原作小説の3巻まで(アニメ二期最終回まで)で、
一通り久美子のお話は収拾が付いてしまっているんですよね。
強いて言うなら番外編で描かれた秀一との恋愛話くらいなんですが、
それだけだと逆に尺が足りなくなっちゃうし
それだと「たまこラブストーリー」と全く同じになってしまうので…
という苦悩がヒシヒシと感じられる映像になっていました。
■黄前久美子のかわいさを愛でる作品
色々と文句を書き連ねているようですが、
僕個人の嗜好としては本当に大満足しています。
なぜなら、
「黄前久美子がとにかく
かわいい作品だった」から!!
いや~可愛いですね久美子。
やっぱり久美子がナンバーワン!!
(すぐ手のひらを返す人間の屑)
後輩がやってきて一日目が終わって開口一番に
「めんどくさ!!!!!」
と漏らす久美子を見て、全国の黄前久美子ファンは
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
ってなったのではないでしょうか。
久石くんを踊り場に呼び出して秀一の話を聞き
ぴょんこぴょんこと跳ねながらのたうちまわる久美子!
かわいい! 正に黄前久美子!!
「エグいな~」と思ったのは
久美子が一番かわいく描かれているのが
「秀一とお祭りでデートしている所」なんですよね。
楽器を吹いてる所や、後輩と向き合っている所、
麗奈と二人でいる所、そういった所を差し置いて
「好きな人と一緒にいる所」が一番輝いている瞬間とする演出。
これはガチ恋勢とかガチ百合厨には酷いモノに見えてしまうかもしれません。
いやホントにお祭りで手繋ぎダッシュしてる久美子マジでかわいいですよ。
秀一と急接近して照れて傘で叩いちゃう久美子マジかわいい
超かわいい。かわいい。
嫌儲で感想スレが一本伸びてたので読みましたけど、
やっぱりいるんですよね「百合じゃなくてヘテロになっとるやんけ!」
って怒ってる人。
いやいやいやいや。
ノンケだろ。
一期の頃から久美子も麗奈もノンケだから。
「ノンケなんだけど、思春期特有の距離の近すぎる友人関係」
なだけだから!!
そういえば、美鈴ちゃんは多分「ガチ」の人ですよねアレ。
少なくとも、アニメではそういう意図で描いてますよね。
水道のところで久美子と麗奈がやたら近い距離感で「あら~」と
やっているところに美鈴ちゃんが
「お二人、近すぎないですか?」って言ってくるところは笑った。
■ここすきポイント
某作品のワカバくんも「お前のここすきを数えろ」といってましたので。
・ストラップチェックをして独占欲丸出しの久美子かわいい
・1年フルートのふぐちゃんは池田絵でもやっぱりかわいい
・髪を切ってリボン小さめになった優子先輩かわいい
・「はいちゅうもーく」ってピョコピョコ動いてる優子先輩マジかわいい
・香織先輩が応援しに来てくれてキャラ崩壊する優子先輩ワロタ
(小日向とおぼしき1年がドン引き&困惑で笑った)
・サンフェスで一瞬佐々木梓(六華高校のやべーやつ)
が出てきたときに「ヒェッ」てなった、あいつ観る劇薬か?
・遠景で謎ダンスを披露する鎧塚みぞれ、かわいすぎでは?
・久石くんの諸々が終わって一気に府大会終わってたけど、
あのすっ飛んだ間に「リズ~」の例の件が色々あったんだろうな…て
思うと趣が深すぎる
・塚本秀一、聖人過ぎでは? フラれる時にちょっとでいいから
怒ってあげてもいいのでは…? 神か?
・オパール川島、初対面で恐らく求くんの素性?に気付いている洞察力!
久石くんも気付いていて名前で呼んでいる。この小悪魔め!
ここの川島と久石が一瞬目配せする所が凄い良かった。
・求くんにも久石くんにも分け隔てなく叱り、見守るサファイア、
なんだこいつ、ママか?
サファイア川島、超人過ぎる。
・香織先輩とあすか先輩の指輪が思ってた以上にバキバキのやつで草
縛る紐がゴツ過ぎる。中世古香織、やっぱこいつやべーやつだわ
・演奏シーンのパーカス描写がおいし過ぎて涎が出る
・ティンパニーちゃんめっちゃおいしい、最高か?
・演奏シーン、3楽章で傘木が映った瞬間発作的に涙が出た
・全身全霊でみぞれに応える傘木…!
・折れずに付いていく傘木…! ウッ…!
・ああああああああああああああああ傘木ィィィ~…!!
・支えた…支えられたね…傘木…がんばったね…
・結果発表後に崩れ落ちる優子先輩…
そばに立つ夏紀先輩…
ああ…報われねぇ…報われねぇなぁ…
・えっ、戻ってきたらいつもの部長やん
なにこの人。強い、強い。強すぎる。
この部長で一年間頑張れてみんな良かったなぁ…
・帰りのバスで「せんぱぁい」言ってる梨々花ちゃん、よい
■おわりに
尺が! 尺が足りない!!
TVシリーズか前後編でやってくれ!!
というか続編はもう無いのか…? 本当に…?
安西千佳(麗奈役)がパンフで言ってたけど
「ここでフィナーレなんて、悔しくて死にそう」
もっと観たいよ…彼女たちの物語を…*2。
今まで本当にありがとう。
4年間もの長い間、この作品と共に歩めたことは、
僕にとって何よりもありがたいことでした。
どうか、どうか…
また「次の曲が始まる」ことを祈って。